『消えない悩みのお片づけ』
ポプラ新書2023年6月7日発表 のあとがきから抜粋:
追記 あの頃を振り返って想うこと――復刻版にあたって
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
この本は、二〇一一年八月に出版された『
読み返すと、いろんな思いが湧いてきます。
その一方で、これまでの歳月の中で、いろんな人たちと出会ったこと、運よく、その後多くの作品(といっても多作ではありませんが)を送り出せたことへの感謝の思いが湧いてきます。
著者の私は、どの作品においても毎回「新しいこと」にチャレンジしています。古い作品に執着しないし、焼き直しも出したくない。毎回、新しくて、オリジナルで、その時々の読者に最も価値ある内容をという一心で、一言一句、心の底から書き起こすことにしています。
だから、この作品も本当なら消えていくはずでした。ほとんど売れなかったからです。
その後もう一冊出しましたが、 これは書き方から勉強し直さねばなるまいと、ある大学の文学部の夜間ゼミに通うことにしました。某作家先生のゼミに入れてもらって、課題図書を読む生活が始まりました。
夜九時過ぎに終わって、バスに乗って、駅前の喫茶店で終電間際まで小説を読むという日々を過ごしました。目を閉じて、読んだ文章を頭の中でなぞる(再生する)という作業をやっていました。瞑想の応用です。
これが二十代の若者なら、
学生に混じって(ときに一緒にファミレスでしゃべったりして)、報われるかどうかもわからない文章の勉強を、四十代半ばで始めたのです。
思い出せる当時の光景は、町はずれの夜のバス停と、薄暗いバスの車内。部屋に戻っても、誰もおらず、テレビもラジオもなく、当時はインターネットを引けるお金もなく、完全に独りきりでした。
もし孤独や不安を感じようと思えば、いくらでもできたと思います。でもそうした思いは、一切ありませんでした。
私にとって、静寂――無であること――は、 先生も友だちもいません。自分がどこから来たのか、何歳なのか、知っている人は、世界に一人もいませんでした。
自分のプライドを守ることを最優先させるような生き方だけは、したくなかったのです。しかし周りは、そうした生き方を望む世界でした。
世界は、当時の私には、とても生きづらい場所でした。
三十代半ばで、すべてを捨ててインドに渡って出家――
(つづきは本の中で)
心優しい人たちに届きますように