夫の立ち位置~結婚後のファースト・ルール


今回は、家庭問題のあるある(切実にしてとても多い悩み)を取り上げます。耳が痛い人もいるかもしれませんが、大事なことなので伝えることにします:


ときおり来る相談の中に、「妻が自分の母(妻にとっての義母・姑)との関係で悩んでいる、避けようとしている、そんな二人の間で板挟みになっている自分(夫であり息子)がつらい、どうしたらよいのでしょう?」という男性からの悩みがあります。

こうした場合に最も多いのが、夫であり息子にあたる自分の姿が見えていないこと。

最も多く、また罪深いケースは、自分の立場を固めていない、責任を取っていない、あくまで妻の悩みであって、妻がおかしい、自分は母(妻にとっての義母)とうまくやっている・・・と思っているらしい場合です。


こうした男性は、母親との距離が近い。近いどころか同じ敷地内・二世帯住宅に暮らしていることもある。男性自身にとっては、それが心地いい。妻にもいい顔、母にもいい顔ができる、そういう状況に潜む根の深い問題にまるで気づかない・・ということが、よくあります。


厳密にルールを決めてください。

母と息子の距離が近くてよいのは、結婚するまでです。

結婚したなら、自分と妻との関係が最重要であり、その関係だけでいったん完結していなければなりません。

自分の母親、妻にとっての義母・姑というのは、自分にとって以上に、妻にとって苦痛にならない距離に、つまりは自分たちの関係の外に置かねばなりません。

それが結婚後のファーストルールです。子供が生まれてからも同じです。


息子と母親との距離が近いと、妻には苦しみが生じやすいのです。そもそも他人だから。

仲の良い嫁・姑関係もあるけれども、そうではない関係もよくあります。

まして、同じ敷地や二世帯住居で暮らすことになれば、妻=嫁としては、常時アウェイの環境に置かれることになります。

それが、妻によっては(すべての妻にとってそうとはいえないけれども、少なくない確率でそうなりがち)苦痛の始まりになるということです。


妻と母との関係に悩む男性というのは、自分は安全地帯にいるから、こうした状況を理解できないことが多いのです。

自分は母親が与える蜜を吸ってきて、甘えることができて、結婚して、夫になった今も、なおその快適さは手放そうとしない。もしそういう選択を無自覚の内にしているとしたら、ルール違反です。

結婚したら、妻が第一。自分の母親はあくまで外様(とざま)です。それくらいの覚悟を決めないと。いつまでも母を第一に考える子供であってはいけないのです。


こうした男性は、自分で気づかないうちに、母親に優しく、妻に厳しく、上から目線になってしまっているものです。

妻が自分の母親とうまくいっていない。それが悲しい、嘆かわしい、腹立たしい、情けない・・などと語ります。

第三者から見れば、なんとも○○○します。あなたは何者?と思えるくらいに、妻に厳しく、冷たい。

「そんなつもりはありません」と、こうした状況に置かれた男性(夫であり息子)は語ります。

そのあたりが、甘ちゃんなのです。そもそもルールを犯して、妻と自分と子供たちだけで完結すべき環境に、自分の親を引き込んで(受け入れて)しまっているのだから。

こうしたルール違反を犯している時点で、そもそも間違っているのです。

たとえるなら、防犯の大事さはわかっているのに、家に鍵をかけないようなもの。たまたま盗まれない、誰も侵入しない状況が続いても、いつ入り込まれるかわからない危うさは続いている。

その危険を察知しているのは、妻かもしれないということです。

夫にあたる男性がこうした問題を自覚するかしないかは別として、危うい状況を作ってしまっていることは同じです。


母親とも妻とも仲良くやっていこう・・・なんて、虫の良すぎる言い分は控えることです。

妻が、姑が嫌いというなら、姑をかばってはいけません。妻の気持ちをそのまま受け止めること。

妻が、義母と関わりたくないというなら、関わらせてはいけません。「外様」に会いに行くのは、自分だけにしてください。

妻が、義父母との同居が嫌だというなら(もはや耐えられないとはっきり言うなら)、妻の気持ちを第一に考えて、現実に動いて見せてください。


どっちにもいい顔を見せようなどという(それも妻にとっては虫唾が走る、あるいは自分の味方でいてくれない夫への不信や嫌悪につながっていきかねません)幼い魂胆は封印することです。

結婚したら、夫は妻の味方であること。それが最初のルールです。


妻と義母、嫁と姑の間に起こる問題というのは、実は解決は簡単なものです。結婚後のルールを守るだけ。

事態をこじらせているのは、夫であり息子である自分。

妻と母の両方にいい顔をしようという立場の固まらない、ずるいといえばずるい自分のあり方が問題であることが多いのです。


立場を固めて、妻第一というファーストルールを守ること。

それが夫になった男が取るべき責任というものです。

まずはあなたが大人になってください、というべきなのかもしれません。


※上記は、あくまで一般論として。しかし妻第一というルールは絶対と思ったほうがよいです。結婚というのは、そもそもそういうもの。

他人だった相手と新たな人生を作り、親という存在を外に置くことを意味します。



2024年6月