『反応しない練習』は誰のためか

興道の里から

今回の著作物タイトル無断使用広告の件については、2023年11月30日付で該当広告が削除されました。

今回の広告に関係があった当事者の方々には、ご対応くださったことに感謝申し上げます。

今後同様の事態が生じることを防止するため、下記の文面は残すことと致します。

なお、今回の顛末につき、草薙龍瞬からの言葉を末尾に追記致します。

興道の里事務局

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世の中、節操がない場所であることは、重々承知しているが――

『反応しない練習』を、自分の事業の広告・宣伝に無断で使っている団体があるという。



『反応しない練習』は、私(草薙龍瞬)が、心を尽くして書き上げた作品だ。

一冊の本の背後には、膨大な体験と思索と研究がある。

『反応しない練習』というシンプルなタイトルにさえ、著者がミャンマーで学んだ原始仏教と、過去の体験から知見が、背景にある。


私の作品は、この世界を生きる、苦悩する人、それでも希望を失わずに生きている人へのエールであり、手紙として、一冊一冊、魂をこめて書いている。

大事な作品だ。そして多くの人が受け取ってくれた。長く格闘し続けてきたこの人生にも、多少なりとも意味はあったと思える。そういう証(あかし)になってくれた作品だ。


「善き人」たちは、活かしてもらっていい。

正しい思いに立って。人としての最低限の分別・常識をわきまえて。

この世界に、ひとつでも幸せが増えるように。


だが中には「利用していい」と思う人間たちもいるらしい。

分別・良心がある団体であれば、他人の著作タイトルを営利広告に利用してはいけないことは、容易に判断がつくだろう。

だが、そうした一線を簡単に超えて、バレない、これくらいかまわないと思うのかもしれないが、こっそりと人の作品を、自分たちの宣伝に利用してしまう。

そのことで、なんらかの利があると思うのかもしれない。

だが現実は逆だ。他人の作品を無断で使ってしまうあり方を見れば、世の多くの人は、こういうグレーの、やってはいけないことを平気でやってしまう団体・人物だと受け止めるだろう。

「借り物」で作った姿という印象を持たれる。エセ、偽者という印象を持たれてしまう。

その時点で社会的信頼を、ひとつ失う。


こうした無断使用の広告を載せてしまう企業の側の問題もある。もし信頼ある新聞やテレビ・出版社であれば、最初の時点で「倫理的に問題あり」として校閲するだろう。

だが、そうした倫理的問題を無視しているのか、調査不足なのか、グレーの広告を作って配信してしまう。

この時点で、広告企業もまた社会的信頼をひとつ失ってしまう。「こういうグレーな広告を出してしまう会社なのだ」と、世の人々は受け止める。


本当は、誰も得はしない。だが、得にならないということが、利欲に駆られた心には、わからないのだろう。

今の世の中、こうしたことが、平然とまかり通ってしまう風潮にある。

 

「利己」は、この世界を支える信頼を、破壊してゆく。

控えるべきは、控えること。互いの立場に敬意を保つこと。

それが倫理であり、まともな人の姿であり、企業の倫理、矜持(本当のプライド)というものだ。


グレーを重ねれば、限りなく黒になる。

黒になって損をするのは、本人たちだろうと思うのだが。

 
あらためて、『反応しない練習』は、著者が命を賭けてつむいだ大事な作品です。

殺伐としたこの世界の中で、生き方を求める誠実な人たちに贈った大切な手紙です。




2023・11・20


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<追記>

この社会の中で活動するすべての個人と団体・企業は、人の幸福に貢献する役割を期待されています。

その期待を守る精神を、倫理と呼びます。コンプライアンス(法令遵守)は、明文化された倫理を守ることです。


今回の件は、倫理という見地から、配信広告の見直しが求められる事態となりました。

この件に対応してくださった当事者の方々は、個人・企業・団体としての倫理および矜持(本当のプライド)を持ち合わせていたものと受け止めています。

その事実に敬意と感謝の意を送ります。


今は、ますます多くの人たちが、苦しみを背負いつつある時代です。

だからこそ、苦しみを一つでも減らすことを共通の目標にして、それぞれが正しい動機に立って、みずからにできることを果たすこと。

そのことで、ようやく人々が社会への希望と信頼を取り戻すことが可能になります。


一人一人の役割は異なりますが、それぞれの場所で頑張ってゆければと思います。

正しい動機に立ち、誠実に働き続けるならば、必ず自らにも、そして人さまにとっても、価値あるものが生まれゆくはずです。


頑張って生きているすべての人に敬意と声援を込めて

 

2023年11月20日
草薙龍瞬敬白合掌